幾らルシファーの加護があるとはいえ、水の中ならばシャーンに有利だ。この場を保たせているのも、半分はシャーンの力に依る。
この場にもう一人の嫉妬の魔王であるレヴィーナがいない今、シャーンが死ねば呼吸が出来なくなったり水圧で潰されるかもしれない。
ただ、シャーンに対しては問答無用で殺すのではないようだった。それは、彼女なら妃の死に近い所にいただろうから――何も聞き出さずに殺したりはしないとセレストの中のルシファーは思っている。
ならば、同じようにルシファー復活……エセルを使う儀式についても何か知っているのかもしれない。
何としてもシャーンを一度殺さずに捕縛しなければ。
「思うように動けない……!」
この場は踏ん張りが効かないが、かと言ってセレストは人魚のように自在に泳げる訳でもない。シャーンの起こす水流に、セレストは翻弄されるばかりだ。
「如何したの、亡霊。私に全然手が届かないわよ」
せめて、陸に上げるか冷静さを失わせるかしないと勝ち目はない。
背中に黒い羽を広げてみる。翼に負担は大きかったが水を打ち推進力にする効果と、予想以上にシャーンを怒らせる事が出来た。