Nocturne 5話

 

 青い宝石を持ち出した僕はノクトに逢いに行こうとした。けれど、アイツに捕まった。

 何度も命令したけれど、部下に両側から押さえつけられてしまう。大人の強い力じゃ、抵抗しても無駄だった。

「何なんだよっ!」

「貴方には、生き延びて貰わねばなりません」

 言う事が唐突過ぎて理解出来ない。

「船を用意しました。お逃げ下さい」

 兎も角、ノクトと逢えなくなるのは理解出来た。

「嫌だっ!」

 それでもこの時の僕は無力で。

「やれ」

 白い布を口と鼻に押し当てられた。気持ち悪い、薬品の臭いがする。

「のく、と……」

 精一杯伸ばそうとしても腕は上がらない。霞む意識の向こうには、確かに彼がいるのに届かない。

 

「……」

 囲まれているのは分かっていたが、敢えて逃げはしなかった。何故来ないのか、知りたかったから。

「あの方はもう来ない」

「人を惑わす悪魔よ、死ね」

 武装した男達が、一斉にノクトに襲い掛かる。

「来ない、か……」

 呟いた声も、届かない。

 

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