青い宝石を持ち出した僕はノクトに逢いに行こうとした。けれど、アイツに捕まった。
何度も命令したけれど、部下に両側から押さえつけられてしまう。大人の強い力じゃ、抵抗しても無駄だった。
「何なんだよっ!」
「貴方には、生き延びて貰わねばなりません」
言う事が唐突過ぎて理解出来ない。
「船を用意しました。お逃げ下さい」
兎も角、ノクトと逢えなくなるのは理解出来た。
「嫌だっ!」
それでもこの時の僕は無力で。
「やれ」
白い布を口と鼻に押し当てられた。気持ち悪い、薬品の臭いがする。
「のく、と……」
精一杯伸ばそうとしても腕は上がらない。霞む意識の向こうには、確かに彼がいるのに届かない。
「……」
囲まれているのは分かっていたが、敢えて逃げはしなかった。何故来ないのか、知りたかったから。
「あの方はもう来ない」
「人を惑わす悪魔よ、死ね」
武装した男達が、一斉にノクトに襲い掛かる。
「来ない、か……」
呟いた声も、届かない。