魔王輪舞曲 第13話

 

 勇んでサティアの森を出たはよいが、セレストは途方に暮れていた。

「海の底って……如何やって行けばいいんだろう?」

 流石にルシファーの加護とて窒息は免れないだろう。

 森と領地を接する地域は、流氷が見られる。取り敢えずセレストは大きい氷に乗ってみたが、バランスが取れないで転んだ。

「いたた……」

「おい、何してるんだ」

 そんなセレストに声を掛けたのは、アザラシのような生物達だった。氷の上に寝そべってセレストを笑う。尾や鰭が透明で、より神秘的な生き物だ。

 如何やら彼らは嫉妬の魔王ではなくサティアの方に属するらしい。

「嫉妬の魔王に逢いに行きたいんだ」

「でもお前、海に潜れるヤツじゃないよな」

「うん……だから、如何したらいいんだろうかなって」

 アザラシ達は背中を逸らし……いや、胸を張って教えてくれた。

「簡単さ、人魚に助けて貰えばいい」

 如何やら潜る術を持たない悪魔達は、人魚の作り出す泡の中に入れてもらうらしい。

「あっちの入江にいるよ、ただし歌には気をつけな」

「有難う」

 

next