「貴方なんでしょ、マーモンを殺したのって」
「……」
「安心して、別に何もしないわ。負ける方が悪いのよ」
あんな格好を見られたのだから、無理もないのかもしれない。
「ただね、貴方は強欲の魔王の椅子が欲しくてやったんじゃない……のよね?」
もしそうなら、名乗りを上げているはずだもの、とサティアは言う。
「……うん、実は」
セレストは傲慢の魔王との契約を、喋った。ルシファーの力が反応しないので、ベリアルと同じく違うのだろう。
「ごめん……」
黙って話を聞いてくれた事やサティアが悪魔らしくない事――不思議なモノで、やはりロッテに対しているような気がする。似てはいなかったが。
だからつい、謝ってしまったのだ。
「いいのよ、貴方の選択した事なんだから」
何故謝られるのか分からないといった風だったが、サティアに言われたら――許された、ような気になった。
「そうね――ただ、知っておいて。如何して貴方は悪魔を殺さないといけないのか」
「彼らが、メルキュリアを殺したから……だよね?」
「ええ、でも如何して彼女が殺されたのかも聞いてる?」
セレストは首を横に振る。
「人間にはちょっと分からないかもね。魔界に住む悪魔にとっては、ルシファーの愛を得る事が全てなのよ」
異国にあるという、後宮のような事だろうか――そうセレストは想像した。
「そうね、魔界全体が後宮なのよ。男だろうと女だろうと無性両性関係なく、ルシファーの為に存在する世界」
愛を得たから、メルキュリアは殺された。
「で、肝心のルシファーが後追い自殺しちゃって。そしたら次に何が始まったと思う?」
心底呆れていると言いたそうに、サティアは肩を竦めた。
「人間の女の魂を使って、ルシファー復活の儀式をやってるの」