魔王輪舞曲 第9話

 

 力任せに、セレストはマーモンの腕を引き千切る。一瞬だけマーモンは苦痛に顔を歪めた。

「強欲の魔王を舐めるでないぞ人間」

 マーモンの腕が新しく生えたが、気にせずセレストは古い腕をマーモンの腹に刺す。

「蜥蜴が何を偉そうに」

「ぐっ……!」

 自らの一部を腹から引き抜くと、やはり傷は直ぐに癒えた。

「ははっ、この通りですぞ陛下。如何やって殺しますかな」

「確かに貴様の回復力は並みの悪魔の比ではない。だが、貴様自身が制御し癒しているのではない」

 マーモンの足を捩じる――今度はそう簡単に千切ったりはせず、痛みが長引くように責めを変えた。

「痛覚もあるしな」

 他の手足と、首にも同じ事をする。その上で壁に磔にした……杭として使ったのも、マーモンの身体から抜いた骨だ。余裕だった強欲の魔王の表情が見る見るうちに青くなる。傲慢の魔王の亡霊は、背骨を折っては治るのを待つ。

「目障りだが楽には死なせん」 

 超回復――それは、この場においては苦しみを伸ばすだけだった。堪らず悲鳴を上げる。

「あ……あああああああお許しください! ご慈悲を、どうかご慈悲を……ルシファー陛下!」

 やがて――強欲の魔王は自ら無限と称した自慢の回復力を、恨む事になる。

「慈悲? そのようなモノを、魔王に望むとは滑稽だ」

 

 許しを乞う強欲の魔王を痛めつける姿に、最早かつてのセレストの面影はない。

 

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