力任せに、セレストはマーモンの腕を引き千切る。一瞬だけマーモンは苦痛に顔を歪めた。
「強欲の魔王を舐めるでないぞ人間」
マーモンの腕が新しく生えたが、気にせずセレストは古い腕をマーモンの腹に刺す。
「蜥蜴が何を偉そうに」
「ぐっ……!」
自らの一部を腹から引き抜くと、やはり傷は直ぐに癒えた。
「ははっ、この通りですぞ陛下。如何やって殺しますかな」
「確かに貴様の回復力は並みの悪魔の比ではない。だが、貴様自身が制御し癒しているのではない」
マーモンの足を捩じる――今度はそう簡単に千切ったりはせず、痛みが長引くように責めを変えた。
「痛覚もあるしな」
他の手足と、首にも同じ事をする。その上で壁に磔にした……杭として使ったのも、マーモンの身体から抜いた骨だ。余裕だった強欲の魔王の表情が見る見るうちに青くなる。傲慢の魔王の亡霊は、背骨を折っては治るのを待つ。
「目障りだが楽には死なせん」
超回復――それは、この場においては苦しみを伸ばすだけだった。堪らず悲鳴を上げる。
「あ……あああああああお許しください! ご慈悲を、どうかご慈悲を……ルシファー陛下!」
やがて――強欲の魔王は自ら無限と称した自慢の回復力を、恨む事になる。
「慈悲? そのようなモノを、魔王に望むとは滑稽だ」
許しを乞う強欲の魔王を痛めつける姿に、最早かつてのセレストの面影はない。