その後、僕は何度もノクトに会いに行った。
「お待ちを」
鬱陶しいのに見つかった。コイツは母さんと父さんがいなくなってから、兄さんとこの家を取り仕切っているヤツだ。
「このような時間に、どちらへ?」
「お前には関係ないだろ」
だから何も言わなかったけど、僕の邪魔をするなら別だ。
「危険です」
「煩い、お前はクビだ」
僕はそう言い切って出掛ける。ノクトがいるから危険なものか。
「……」
だから、その後コイツがやる事に僕は気づかなかった。
「探れ」
「はっ」
もし此処でその陰に気付いていたら、未来は違っていたのかな。
「ノクト」
「また来たのか」
僕達は何時もの木箱の上に座る。そして、取り留めのない会話を、ずっとするんだ。
「危険だから行くなってさ、煩くて困る」
頬を膨らませながら僕はついさっきの出来事をノクトに話した。
「感心しないのは確かだ」
後から知った事だけど、此処は所謂スラム街。ちなみに――あの日僕が変な人に捕まったのは、売春宿が並ぶ通りだったらしい。
「大丈夫だよ」
僕はそっと、ノクトの背中に触れる。そうするとノクトは何時ものように、蝙蝠の翼を生やした。
「最強のノクトがいるんだもの」