The dawn 第10話

 

「如何いう事ですかな、オズマ卿」

  暁光神団・大聖堂審問室の、高い机に囲まれた証言台。普通の人間ならば立つ事さえ出来ない威圧感の中、オズマと呼ばれた男は毅然と立っていた。

「貴殿の部下フェルゼンは奴らに身を寄せましたぞ」

  年老いた神団の幹部達の責める言葉にも、オズマは堂々と答える。

「我が配下であるフェルゼンを聖女の側に、改めて警護につかせただけの事。サンドリアの小僧達に任せきりにするよりは、余程神団に有利と思ったまで」

  その態度には、周りの者は歯噛みしながらも黙るしかない。

 

  十字軍は神団のものであるが、実際に兵を束ね動かすのはオズマだ。故に、彼を慕う者も多い――フェルゼンがそうであるように。

「ありがとう、オズマ」

「フェルゼンは部下である以前に我が友だ」

  巨躯には似合わず、オズマは優しく幸福ウサギを撫でる。きゅ、と短くアンリは鳴いた。

「改めて、フェルゼンに聖女警護の命を下す」

  オズマから受け取った羊皮紙をアンリは大切に抱えた。

「送りの者は手配してある。早く行って、フェルゼンに渡してやれ」

  真面目な友人は、今頃神団を――自分を裏切ったと思い詰めているだろうから。

「うん、僕がフェルゼンを助けてあげないとね」

  幸福の手紙を持って、アンリはクライストの地を目指すのだった。

 

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