「如何いう事ですかな、オズマ卿」
暁光神団・大聖堂審問室の、高い机に囲まれた証言台。普通の人間ならば立つ事さえ出来ない威圧感の中、オズマと呼ばれた男は毅然と立っていた。
「貴殿の部下フェルゼンは奴らに身を寄せましたぞ」
年老いた神団の幹部達の責める言葉にも、オズマは堂々と答える。
「我が配下であるフェルゼンを聖女の側に、改めて警護につかせただけの事。サンドリアの小僧達に任せきりにするよりは、余程神団に有利と思ったまで」
その態度には、周りの者は歯噛みしながらも黙るしかない。
十字軍は神団のものであるが、実際に兵を束ね動かすのはオズマだ。故に、彼を慕う者も多い――フェルゼンがそうであるように。
「ありがとう、オズマ」
「フェルゼンは部下である以前に我が友だ」
巨躯には似合わず、オズマは優しく幸福ウサギを撫でる。きゅ、と短くアンリは鳴いた。
「改めて、フェルゼンに聖女警護の命を下す」
オズマから受け取った羊皮紙をアンリは大切に抱えた。
「送りの者は手配してある。早く行って、フェルゼンに渡してやれ」
真面目な友人は、今頃神団を――自分を裏切ったと思い詰めているだろうから。
「うん、僕がフェルゼンを助けてあげないとね」
幸福の手紙を持って、アンリはクライストの地を目指すのだった。