The dawn 第5話

 

 すっかり日が落ちて、月が輝きだした頃――出陣前に待機していた部屋に、幼馴染達は集まって寛いでいた。昼間と違うのはイグナスがいる事と――ダンテには碧い瞳の少女が、シャルトには翠の瞳の少女が、それぞれ寄り添っている。少女達はどちらも美しい金髪の持ち主で、よく似ていた。

「入ってくれ」

「団長、報告書書き終わりました」

 軽いノックがあった後、紙の束を抱えたシオネリーゼが入って来た。

「読み上げてくれ」

 如何やら報告書を書くのは彼女の役目らしい。

「聖女達を浚った悪魔崇拝者と、国境付近の廃教会にて戦闘。リーシャ、ユリシアの身柄を無傷で確保。メルダミカのみ、行方が知れず……」

 曇っていた表情のケイが更に項垂れた……無理もないだろう。

「きっと、メル姉様は無事でいるよ」

「必ず廻り逢えます」

 二人の少女――リーシャとユリシアの二人が言うと、不思議とそんな気がした。姉妹の繋がり、のようなモノがあるのだろうか。

「引き続き九尾騎士団も協力しよう。依頼された救出対象は三人だからね――シオネリーゼはその事も書いて、神団に出すように」

「はい」

「だが、この後本部に戻って発見を待つのもなぁ。面倒だ」

「……あのっ!」

 ブレイズが声を上げると、皆が注目する。赤くはなく、真面目な顔――ブレイズには、心から友人を思っての行動だった。

「私の国に来ては如何でしょうか。クライストは大陸のほぼ中心、何処に行くにも迅速に移動可能だと思います」

「ふむ」

 にやりとイグナスは笑った。

「それではお言葉に甘えようかな」

「ダンテ、私達も騎士団を手伝おう」

「ああ。面白いモノも見られそうだしな」

 リーシャは首を傾げた。勿体ない、ダンテはこの場で今すぐにでも教えてやりたい衝動に駆られる。

「後で説明してやるよ」

 ダンテがブレイズに、口の動きだけで言う。

「これでしばらくはあの女と一緒にいられるな」

 

 やっとそれに思い付いて――今度こそ、ブレイズの頬は深紅に染まった。

 

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