戦闘出来る者達が外に出払っている為、1階を制圧するのは楽だった。今もまた外から怒声や悲鳴、金属がぶつかり合う音が聞こえてくる――陽動組が頑張っているのだろう。
悪魔崇拝者のアジトである廃教会は広くなかったが、聖女達の姿は見つけられない。ダンテ達は2階をイグナス達に任せる事にした。
「地下、か……恐らく、食料の貯蔵庫か――あるいはそれを改造した牢か何かがあるだろう」
ケイが片っ端から床を剥がすと案の定……石で出来た階段を見つけた。
「ライト」
シャルトが白く光る照明球を出した。見張りがいたら気付かれてしまうのは好ましくない――よってぼんやりとしたものだったが、足元を照らせればそれで事は足りる。
ダンテを先頭にして、音を立てないように降りて行く……やがて階段は終わり、木製の扉が見えた。
一旦止まり、ダンテが耳を押し当てる――気味の悪い歌のような呪文と、嫌な空気。
「……いるぜ」
3人は頷きあった。ケイとダンテの二人で蹴破る。木製の脆い扉などに、侵入者を防ぐ役目など果たせなかった。
「リーシャ!」
「ユリシアッ!」
怪しげな紫色の炎に照らされた室内には、香が焚かれているのだろうか。身体の自由を奪うように、空気が身体に纏わりつく。こんな所に愛しい者達がいる――そう思うと、いても立ってもいられない。
一緒にいるシャルトやケイも同じらしかった。ダンテとケイが祭壇に向かって駆け出して行っても、普段は冷静な筈のシャルトは止めずに光の魔法で悪魔崇拝者達の動きを封じていく。
「ダンテ……!」
祭壇の上に寝かされているのはリーシャだった。四肢を縄で固定され、それでも懸命に首を動かしてダンテを見る。その奥には檻に入れられているユリシアが。しかし、メルダミカの姿は見当たらない。
「メルちゃんは何処だっ!」
怒るように大剣を振るうケイ。しかしローブを着た崇拝者達は沈黙したままメイスを振り降ろした。代わりにユリシアが答える。
「メル姉様は、何処かに連れて行かれてしまいました……!」
間髪入れずにシャルトがケイに言う。
「ケイはメルを探せ。外に移されたとしても、まだそう遠くには行っていない筈だ!」
「でも……」
迷うような素振りを見せるケイに、ダンテは笑って応えた。
「雑魚の上にこんな人数、俺とシャルトだけで十分だから言ってんだ! 行け!」
片刃の剣で崇拝者を切り裂き、ダンテは祭壇に向かって走って行く。
「分かった――!」
儀式の間を出るケイと入れ替わるように、シャルトはダンテを追う。
ダンテは背中と、敵を倒した後に出来る隙が多い。今もまた後ろから斬り掛かる崇拝者に、シャルトは光の球を放つ。良くも悪くも真っ直ぐな性格と、後ろにいる仲間を信頼している故なのだが……従者の苦労が偲ばれた。
「く、来るなっ!」
祭壇に一番近かった、最後の崇拝者がリーシャの首筋に刃を当てる。
リーシャを切り裂くのが先か、ダンテの剣が届くのが速いか――果たして。