貴女は信用出来ないのです、何故……ですか?
そんな保証は何処にもないのですよ?
ならば、無害な今の内に。
生きていれば、何時かお前は――。
「シオネリーゼ!」
意識が覚醒して、はっと目を開く。自分を覗き込む、心配そうな表情が今日初めて見たものになった。
「大丈夫か?」
この長く柔らかい藤色の髪を持った人は、人間では一番の友・テスタロッサのものだ。
「……テス?」
「中々起きてこないと思って……悪いと思ったんだが入ってみたら、魘されていたから」
それはそうだろうな、最悪の夢だったもの。テスには本当に感謝しないと。
「起こしてくれてありがとう、テス」
ベッドから出て、カーテンを開ける。朝の陽ざしは白くて、陰鬱な気持ちを消してくれる。
「それよりも、一度湯浴みに行った方がいい。今日は大切な、初任務の日だろう?」
言われてみれば、汗に濡れた夜着や髪が身体に張り付いて気持ち悪い。この地方の偉い人にも会うらしいし、それがいいかもしれない。
「ただ、湯浴みをしたら朝食は取れないな……サンドウィッチ作っておくから、移動中に食べてくれ」
本当に、私はこの隣人にして親友のテスタロッサには感謝しなければならないな……。
「急がないと、イグナスに減給されてしまうぞ?」
またお礼を言おうと思ったが、そう言ってテスは壁に掛けて置いた制服と乾いた布を渡してくれた。
「うん、ありがと!」
風呂場へと向かいながら、廊下を照らす光を浴びる。改めて、今日は良い日になりそうだ。
実際、この日が私の人生に置いて――大切な、ハジマリの日となるのだった。
next