案内された建物は、廃倉庫のようだった。外にいる見張りは1人、他の仲間はセラを探しに行っているらしい。
「きゅー」
見張りに聞こえるようにナリィが鳴き、壁から耳だけを出す。
「あっ……!」
気付いて案の定近寄って来た見張りをダンテとケイが一撃で沈める。非道な輩に尽くす礼は持ち合わせていなかった。
見張りには口に布を詰めて縄で縛り、物影に置いておいた。後でブレイズが引っ立てればいい。
「行くぞ」
「うん!」
「なかまをたすけるのだぁぅ!」
後は簡単な話だった。シャルトの放つ眩い光で密猟者や売買人の目を焼いた後は、大暴れするだけでいい。
「一応は殺さないで頂きたいのですが……」
律儀に峰撃ちで気絶させるブレイズとは違い、3人は遠慮なく切りつけていった。
「無理じゃないですか、特にサンドリア公」
ブレイズが気絶させた者達の手足を縛りながらシオネリーゼは言う。彼女の言う通り――シャルトは相当頭に来ているらしく、何時もより光球の弾ける回数が多かった。
「聞こえてる、殺さなきゃいいんだろうが!」
ダンテ達も確かに殺してはいないようだったが、その一歩手前である。クライスト騎士団が到着する前に失血死しそうだ。不届きな者ではあるが死なせないように回復魔法を掛ける為に、シオネリーゼは溜息と共に杖を取り出した。
そんな光景をウサギ達に見せないように背中で隠しながら、三姉妹がウサギ達を保護する。どのウサギも傷だらけでぐったりとしていた。
「もう、大丈夫ですからね」
ユリシア達の柔らかい表情から、ウサギ達は敵ではないと判断したらしい。人間に怯えてはいたが、大人しく手当てを受けてくれた。
「……サンドリアの匂いがする」
シャルトやナリィやユリシアの、服や持ち物から微かに香る故郷の匂いも味方してくれたようだった。
「直ぐに帰してあげるからね」
メルが撫でるとすりりと返事をする。
「……まま、きゅぅ」