「にあってるのだぞ!」
「……ありがとう」
レースのあしらわれた服、いつもより短いスカート、踵の高い靴--全く以って自分の趣味ではない。動きにくい事この上ない。
「流石はリーシャの見立てだ」
「でしょ」
こんなに嬉しそうにされては、今すぐ騎士服に着替えるとは言い出せなかった。
「ブレイズもそう思うよな?」
気を利かせてケイがブレイズに振ってやる……が。
「ははははい、とてもよくお似合いです!」
「無理に褒めなくても結構ですよ」
本心じゃないから言葉を上手く出せないのだ、とシオネリーゼは考える。如何してこうも裏目に出るのだろう--後ろ向きな考え方をシオネリーゼはするのだろうか。
「無理ではありません! 貴女があまりにも美しいから見とれてしまって」
「有り得ません」
実るのは、何時の事やら。
「むきゅ?」
ナリィの耳が、ぴくんと揺れた。抱いていたユリシアがナリィに尋ねる。
「如何かしたのですか……?」
「泣き声がするのだぁぅ!」
「おい、待て危ないだろう!」
シャルトとユリシアを先頭に、皆でナリィを追いかけた。狭くなっていく道を、ナリィはどんどん跳ねて進む。
「ここなのだぁ!」
「……きゅぅー」
曲がった路地裏で見つけたのは、小さな雌の幸福ウサギだった。