The dawn  16話

 

「にあってるのだぞ!」

「……ありがとう」

 レースのあしらわれた服、いつもより短いスカート、踵の高い靴--全く以って自分の趣味ではない。動きにくい事この上ない。

「流石はリーシャの見立てだ」

「でしょ」

 こんなに嬉しそうにされては、今すぐ騎士服に着替えるとは言い出せなかった。

「ブレイズもそう思うよな?」

 気を利かせてケイがブレイズに振ってやる……が。

「ははははい、とてもよくお似合いです!」

「無理に褒めなくても結構ですよ」

 本心じゃないから言葉を上手く出せないのだ、とシオネリーゼは考える。如何してこうも裏目に出るのだろう--後ろ向きな考え方をシオネリーゼはするのだろうか。

「無理ではありません! 貴女があまりにも美しいから見とれてしまって」

「有り得ません」

 実るのは、何時の事やら。

 

「むきゅ?」

 ナリィの耳が、ぴくんと揺れた。抱いていたユリシアがナリィに尋ねる。

「如何かしたのですか……?」

「泣き声がするのだぁぅ!」

「おい、待て危ないだろう!」

 シャルトとユリシアを先頭に、皆でナリィを追いかけた。狭くなっていく道を、ナリィはどんどん跳ねて進む。

「ここなのだぁ!」

「……きゅぅー」

 曲がった路地裏で見つけたのは、小さな雌の幸福ウサギだった。