一段と明るい声が、館に響く。今日は、揃って市場へと行く予定だ。メルの服を買う、という目的はあるが要は皆で出かけたいのだ。
「で、誘えたのか?」
「……いいえ」
奥手な男が此処に一人、言わずもがなブレイズである。一緒に街に出掛けましょう……それだけの事がシオネリーゼに言えなくて、落ち込んでいる。
「にこにこと何時もみたいに言えばいいのにな」
「如何やらそれが嫌われる原因のようだが」
シャルトに言われるまでもなく、彼女の神経に触るらしいのは分かっていた。が――緊張と困惑を笑顔で隠して接するしか、素面のブレイズに方法はない。
「俺、声掛けて来てやるよ」
「われもシオネリにたのむのだぁぅ」
不思議な事に……女性陣と明るい性格のケイ、そしてナリィにはシオネリーゼも少し心を開くらしい。羨ましい限りである。ちなみにダンテは貶されていたが一応信用しているようだった。
「私も街に、ですか?」
「女同士ですから」
「絶対に来て欲しいの!」
シオネリーゼはこれも聖女の護衛任務と思いついて来てくれるようだったが、それでもいいだろう。
「試着室の中だろうとリーシャは俺が守る!」
この万年発情期男から守らなくてはならないのは、確かなのだから。
「それ全然いい事言えてませんよ」
すかさず突っ込みを入れる辺り、少しは馴染んでくれたと思う。
「シオネリちゃん、何時も騎士団の制服なんだもの」
女の子ならオシャレしなくちゃ、と三姉妹が見立てた服を渡して試着室に押し込んだ。何故なのだろう、こういう時の女の行動力は半端ではない。
「……メルダミカ様の服を買いに来たのではないのですか?」
「そんな風に呼ぶとカーテン開けちゃうよ?」
以降、シオネリーゼは三姉妹を様付けではない呼び方をするようになった。