The dawn 第15話

 

 一段と明るい声が、館に響く。今日は、揃って市場へと行く予定だ。メルの服を買う、という目的はあるが要は皆で出かけたいのだ。

「で、誘えたのか?」

「……いいえ」

 奥手な男が此処に一人、言わずもがなブレイズである。一緒に街に出掛けましょう……それだけの事がシオネリーゼに言えなくて、落ち込んでいる。

「にこにこと何時もみたいに言えばいいのにな」

「如何やらそれが嫌われる原因のようだが」

 シャルトに言われるまでもなく、彼女の神経に触るらしいのは分かっていた。が――緊張と困惑を笑顔で隠して接するしか、素面のブレイズに方法はない。

「俺、声掛けて来てやるよ」

「われもシオネリにたのむのだぁぅ」

 不思議な事に……女性陣と明るい性格のケイ、そしてナリィにはシオネリーゼも少し心を開くらしい。羨ましい限りである。ちなみにダンテは貶されていたが一応信用しているようだった。

「私も街に、ですか?」

「女同士ですから」

「絶対に来て欲しいの!」

 シオネリーゼはこれも聖女の護衛任務と思いついて来てくれるようだったが、それでもいいだろう。

「試着室の中だろうとリーシャは俺が守る!」

 この万年発情期男から守らなくてはならないのは、確かなのだから。

「それ全然いい事言えてませんよ」

 すかさず突っ込みを入れる辺り、少しは馴染んでくれたと思う。

 

「シオネリちゃん、何時も騎士団の制服なんだもの」

 女の子ならオシャレしなくちゃ、と三姉妹が見立てた服を渡して試着室に押し込んだ。何故なのだろう、こういう時の女の行動力は半端ではない。

「……メルダミカ様の服を買いに来たのではないのですか?」

「そんな風に呼ぶとカーテン開けちゃうよ?」

 以降、シオネリーゼは三姉妹を様付けではない呼び方をするようになった。